西武旭川店(旭川市1条通8)A館7階で現在、「福井江太郎 絵本刊行記念展」が開かれている。
米国やドイツ、台湾で個展を開催するなど世界を舞台に幅広い活動を展開し、2013年には箱根の岡田美術館に縦12メートル横30メートルに及ぶ世界最大の巨大壁画「風・刻」を手掛け話題を呼んだ日本画家の福井江太郎さん。今回、福井さんが表紙などの絵を手掛けた絵本「駝鳥(だちょう)」(文=筒井康隆さん)の完成記念として同展を開催。今では福井さんのアイコンとなったダチョウの作品をはじめ、ユリやアヤメなど花を描いた作品を展示する。
曽祖父と祖父が日本画家で、父・昭雄さんは洋画家という家系に生まれた福井さん。「父親が洋画へ進んだので息子には日本画を描かせたかったみたい。そのわなにはまった」と話す。思春期や青春時代は「この環境でなければ絵を描いていなかったのではないか」と悩んだといい、「本当に絵が好きで描いているのか、環境がそうさせたのか。その中で生まれたのがダチョウシリーズ」と作品について話す。
作品にかける時間について、「日本画という作品スタイルは描き直しができない。すべて一発勝負。ダチョウの首はワンチャンス。作品のこの線を描くためにこの絵の裏には何百点という絵があって、初めてこの一点が出来上がる」と話す。「物理的に描いている時間だけではなく、目に見えない時間こそ本当の絵を描く時間」とも。365日、常に何をつくり出そうか考えているといい、「一瞬神が降りてくる『これかな』という瞬間に手を動かし、『そうでもない』との思いを繰り返す」という。
「作品を見ている人はダチョウではなく、その絵の向こう側にある、例えば家族や兄弟などを感じてくださる。花や動物をテーマに描いているが、『人間というもの』をテーマに作品をつくっているので、生きていく自信のようなものを感じてほしい」と福井さん。「今まで美術に興味がない人や日本画に触れる機会がなかった人も、絵本を通して触れていただければ」と来場を呼び掛ける。
営業時間は9時30分~19時30分(最終日は16時閉場)。11月9日まで。