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旭川ゆかりの詩人・小熊秀雄の詩をイラスト・漫画に 旭川の漫画家が独自解釈で

小熊秀雄の詩を「独自解釈」でイラスト・漫画化した旭川市在住の漫画家・日野あかねさんと漫画「焼かれた魚」などの作品

小熊秀雄の詩を「独自解釈」でイラスト・漫画化した旭川市在住の漫画家・日野あかねさんと漫画「焼かれた魚」などの作品

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 旭川市在住の漫画家・日野あかねさんが、旭川ゆかりの詩人・小熊秀雄の詩を「独自解釈」でイラスト・漫画化し、その作品を集めた個展「拝啓 小熊秀雄さま カムイの子より愛をこめて」が現在、フィール旭川(旭川市1条通8=買物公園)4階の「BOOKMARK CAFE」で会期を延長して開催されている。

昭和20年代のロマン感じる旭川の情景に小熊秀雄の姿を思い描いた5枚構成の「旭川風物詩」

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 同展は、漫画化した「焼かれた魚」のほか、「長長秋夜(じゃんじゃんちゅうや)」「星の光のように」など小熊秀雄の詩に色彩豊かなイラストを描いた17点の作品を展示。小熊秀雄が旭川で過ごした頃の街中の情景に重ねて小熊秀雄の姿を思い描いた5枚から成る「旭川風物詩」は、昭和20年代の「ロマン感じるタッチ」が味わい深いものになっている。

 日野さんが小熊秀雄の詩をイラスト化し始めたのは、「こども冨貴堂」(7条8=買物公園)で6年前に購入していた冊子「焼かれた魚」を今年になり再読したのがきっかけ。同作品は、焼かれて皿に並べられた魚が、故郷である海が恋しくなり、出合う動物に懇願して海に帰る物語で、日野さんは、その魚の姿がコロナ禍の今の生活に重なり涙が流れたという。

 当初、「独自解釈」でイラスト化することに何かしらの承認が必要なのでは、と考えた日野さんは、「あさひかわ新聞」を発行し「小熊秀雄文学賞実行委員会」事務局を担う「北のまち新聞社」(8条通6)に連絡を取ってみたところ、「彼の作品を描いた人はおらず、画期的な取り組みなのでどんどん描いたらいい」と背中を押してくれたという。その後、旭川文学資料館や旭川中央図書館、古書店などで資料研究に励み、日に日に小熊秀雄と当時の旭川についての理解を深めていった。

 日野さんは「小熊秀雄は、満足に学校に通うことができなくても語彙(ごい)力があり、新聞記者上がりでもあるため庶民にも分かりやすい表現が身についている。新聞記者を経験していなかったら才能が開花していなかったかもしれない」と分析する。「彼のキャラクター・個性に触れ加速度的に魅せられていたところ、後に『焼かれた魚』の主人公が自分だ、と語っていたことを知って一気に引かれた。詩人というと敷居が高く、作品も分かりづらいイメージがある中、小熊秀雄の詩は散文詩で、内容も大陸的でカラフルなので絵が浮かびやすく、漫画のネーム、アニメの絵コンテとの共通性を感じながら夢中で描き上げることができた」と振り返り、作品も日に日に増えているという。

 反響も大きく手応えを感じているという日野さんは、今春には作品を書籍にして出版し、来年6月には旭川中央図書館での展示も決まった。「とかく何もないと言われる旭川だが、旭川には買物公園や音楽大行進を生んだ土壌がある。コロナ禍の中、地方が熱くなってもいいのでは」と話し、「独り占めしたくて描いているのではなく、世代を超えて小熊秀雄を好きな人と知り合い、いろいろな解釈の下で語り合いたい。展示を見て、旭川で詩人の道を歩み始めた小熊秀雄に興味を持つきっかけになればうれしい」と来場を呼びかける。

 同展では、それぞれの作品のポストカードを販売しており、売り上げは全額「小熊秀雄文学賞実行委員会」に寄付される。

 開催時間は11時~18時30分。火曜定休。1月15日まで。
 ポストカード1枚150円。「旭川風物詩」(5枚セット)500円。

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