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江口寿史さんがライブスケッチとトークショー 旭川美術館のイラスト展「彼女」 

江口寿史さんのライブトーク(左)とプレゼントされたスケッチを持つモデルとなった高校生

江口寿史さんのライブトーク(左)とプレゼントされたスケッチを持つモデルとなった高校生

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 漫画家・イラストレーターとして活躍する江口寿史(ひさし)さんが、北海道立旭川美術館(旭川市常磐公園内)で、7月24日にライブスケッチを、翌25日にライブトークを行った。同館で開催中の「江口寿史イラストレーション展 彼女 ~世界の誰にも描けない君の絵を描いている~」の一環。

ボーダーシャツのしわを描いたことで他の漫画家も「スクリーントーンではなくしわを表現しなければならなくなった」と恨まれたと笑う江口さん

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 ライブスケッチは10時~16時30分、公募した女性モデルを江口さんがボールペン1本で即興素描。会場は入れ替え制にもかかわらず、江口さんのライブスケッチを一目見たい観覧者で常に満員に。会場では江口さんの斜め頭上から手元を捉えたカメラの映像がモニターに映し出され、女性モデルが細かなディテールで描き混まれて「江口スタイル」の魅力が引き出された「彼女」になっていく様子を見守った。

 江口さんは女性モデルと時折会話を挟みつつ、真剣なまなざしでモデルと手元交互に視線を移して描き続け、30分ごとに2人、休憩を挟みながら計20人を描き上げた。できあがった作品はその場でモデル本人に贈り、後日、同じものを同展にも追加展示する。

 ライブトークでは、同展を監修した美術評論家の楠見清さんに、江口さんが昨年札幌で一緒に飲んだ仲という作家・桜木紫乃さんと漫画家・もんでんあきこさんが加わり、2人の女性が見た「彼女」展として、それぞれが注目した作品を会場のスクリーンに映し出してトークを展開。

 映し出された作品のキャプション「女性の何気ない仕草に、母性も無邪気も優しさも生活も、全てを含んだ色気がフォルムになっている一瞬があるんです」に対し、女性の色気について問われた江口さんは「唇のぽってりした質感が全て」と答え、唇は一番最後に着色するほどこだわっているという。「仕組み・構造を理解しないと描けないタイプ」なため、まぶたの裏の肉感やセーターの編み目など、常に頭の中でひもといて描写するこだわりも披露した。

 「女に生まれなかった悔しさが、絵の原動力になっている」「かわいらしい女性を見ると、その人を手に入れたいというより、その人になりたいと思っちゃう」というキャプションには、「来世は女に生まれたい」と江口さん。「これからでもなれる」という声に、「骨格とかも含めて、本当にきれいになりたいので諦めている。だから絵でやっている。絵は自分の願望だと思ってほしい」と笑って答え、以前ライブスケッチを終えた女性から「女に生まれてよかった」という感想をもらったことがあり「そのときは自分の気が済んだ」とも答えて、江口さんの作品の根源に触れた会場には笑顔があふれた。

 「絵を描くことは高揚と失意のくりかえしです」というキャプションには、「まさにその通りで、常に苦悩と裏合わせ」と言い、「それがあるからまだ描いている」とも。

 ライブスケッチ・ライブトークとも全道から多くの応募があり、かなりの高倍率で抽選が行われたという。遠軽町から参加した女性は「姉弟で大ファンなので、当選して感激した」と話し、札幌市から参加しライブスケッチのモデルを終えた高校生は「若いうちに描いてもらいたかった。緊張したが今はとても感動している」とかみしめるように感想を語った。

 開館時間は9時30分~17時(最終入館は16時30分)。月曜休館(8月9日は開館)。観覧料は、一般=1,200円(前売り1,000円)、高大生=700円(同500円)、中学生400円(同300円)。9月5日まで。

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